身体拘束は人間の尊厳を失うだけでなく、精神的ストレスの増大により、人間が本来持ちうる身心の機能を損ねてしまいます。当ホームでは、法人の理念「誠の心」に基づき、身体拘束は原則として行いません。 身体拘束をどうしても行わなければならない場合(生命又は身体を保護する為に緊急やむを得ない場合)は、本人又はご家族にその理由を説明し、同意のもとで行い、記録を取ることを原則とします。 当ホームでは、「利用者の尊厳、個々に合ったより良いケア」を目標としています。 まず、利用者が生活する上で、どうしたら安全で安心が図られるかを考え、それを阻害している要因があるとすればその原因を究明し、取り除く工夫を行い、そして利用者が快適に過ごして頂ける様に、日々実践、改善努力をしております。 吉祥寺ナーシングホーム 施設長 大久保実 |
|||
吉祥寺ナーシングホーム 身体拘束廃止に向けた具体的な取り組み事例 | |||
1.体操・アクティビティへの参加 日中お元気な方には食堂に集まっていただくようにしています。午前中は体操をしたり歌を歌うプログラムを、午後には手芸や工作・ゲームなど、その日の担当となった職員が工夫をして様々なアクティビティを提供しています。そのことで見守りが必要な方には自然に職員やボランティアさんの目が届くようにしています。また何人かの方を同時に見守ることが出来るようにすることによって、個別に関わりが必要な場合には職員が対応できるようにと考えています。 |
|||
2.居室での転倒の危険性があるご利用者への対応 立位の保持が困難な方が、明け方にベッドから車イスへ自力で移ろうとする場面に何度か遭遇するということがありました。「歩けるような気になるの…」が、その方から出た言葉でした。 少し前までほとんどの施設では、そのような方の場合には必要に合わせベッドの周囲をサイドレール(柵)で囲み、自分ではベッドから降りられないようにするのが一般的でした。しかし現在はそのようにして行動範囲を制限するのは、抑制にあたるとされています。(現在でも必要とした場合には状況によってそのような対応をとる場合もあります。) ホームでもサイドレールの使用はひとまず封印し、転倒防止の対応方法を検討しました。 その方の場合はナースコールを十分に使用できる方であったため、本人には必ずコールで職員を呼んで欲しい旨、繰り返し話しをしました。 それでも明け方になるとご自分で車イスへ移動しようとすることが続き、転倒する危険性が非常に高かったため、夜勤者は頻回に巡回を実施しました。 しかし職員がずっと付き添っていることは不可能で、いくら巡回を頻繁に行っても空白の時間ができてしまうことは避けられません。そのため、マンパワーだけではなく介護用品の使用についても検討をしました。 巡回をまめに行うと同時に、本人にはいつでもナースコールを押して欲しい旨再度話をし、また本人がベッドから降りられないようにするのではなく、もしも降りて万が一転倒につながった場合でも、ケガをしないよう衝撃を吸収するマットを夜間はベッドの脇の床に敷くようにしました。 マットは就寝介助の時に敷き、起床介助の時にたたむということに決めて実施し、併せて巡回の頻度も多くするようにして対応しました。 その後ベッドから一人で降りようとすることはなくなり、事故は防げています。巡回を頻繁に実施し、気に掛けることで安心感を持ってもらえたのと、眠る時にマットを置くことで本人にも「危ない」ということを意識してもらうきっかけになったのではないかと思います。 |